異文化 あるある Vol.8 英語出来ますはトイレどこ?

困って覚えるサバイバル英語は一生の宝!?

ワタシ、ニホンゴ デキマスを見習え!

今回は言葉は生きている!のお話です。

 

初めての日本にやってくる外国人旅行者の中には、日本語出来ます!という人も多いんです。へ~、どんな?って尋ねると、「コンニチワ」「アリガト」。私たち、インバウンドの仕事をしている人は誰もが、こういう感覚がすごく大事だと思っていると思うんですよ。

多分、日本人は、「ハロー」と「サンキュー」だけ覚えても、英語出来ますとは言わないと思うんですけど、これが自由旅行が出来る大きな要因に違いありません。だって微笑ましいじゃありませんか。たかが旅行ですよ。十分です! そう、この気が大事なんですよね。

 

さて、同じシチュエーションで、この2つのあいさつの他に「トイレ ハ ドコデスカ?」と言った人がいました。思わず笑ってしまったのですが、真っ先に覚えた会話は確かに旅には必要不可欠な言葉ですよね。私もありました!そういう必要不可欠な言葉! 

インドで覚えた「入ってま~す!」

遥か昔話なんですけどね、海外デビューとも言える旅の始まり。スーツケースでまず失敗。インドは道が整備されていない。コロコロ引いて歩けなかった。知らんそんなの!マジか!最初の親切は日本人のやっていたゲストハウス。リュックを借りた。

やれやれ。まったく計画性がないからさ、カルカッタ(現在のコルカタ)からがむしゃらに、どんどこ先へ進んで行って、ついにパキスタンに近いタール砂漠にたどり着いたの。近くにマハラジャの末裔がやっているホテルがあるというので、興味津々、お茶をしに出掛けたのよ。それはそれは、マハラジャだ~!の豪華絢爛たるお城だったぁ~!

 

ターバン巻いたシルクの民族衣装の使用人()が、おも~い銀の食器で杉下右京のように紅茶を淹れてくれたりするのよ。貧乏旅だったので、まあ、カジュアルな服装ではあったのだけど、女王さま気分。ゆっくり過ごす時間の中、中世の映画のセットのようなひろ~いロビーを迷いながらトイレに行ったのでしたが。。。

ラジャスタン州のマハラジャのお城ホテル。ロビーにはガードマン。ティールームやコレクションルームがあった。
ラジャスタン州のマハラジャのお城ホテル。ロビーにはガードマン。ティールームやコレクションルームがあった。

だって、そんな時どーすんのって!

そのトイレね、重厚な扉をあけると、そりゃびっくりの広さで、多分、東京あたりじゃ、このくらいの場所に暮らしている人だっていっぱいいるに違いないってほど。はるか向こうにちゃんとした様式便器がありました。(インドではインド式という型がある)

元お城だからね。使用中なんてわかる印はドアにないわけです。

ドンドン!ドンドン!とノックされた。そこまでは分かる。が、問題はいろいろあって、インドはイギリスの植民地の歴史から、一応イギリス式マナーを重んじる。だからノックする。が、何故だか、相手の返答を待たない。ノックと同時にドアを開けるんだ。

それは、トイレであっても例外ではなかった!! (むろん、鍵はかけていたが・・・)即座にノックを返さねばと思った瞬間、青ざめた!

 

部屋が広いのは開けたときにわかってたけど、このシチュエーションは想定してなかった!広すぎて、両手を伸ばしてもそこには壁がない!それは何を意味するのか!

ぎゃお~!ノックが返せない!!四方八方に空間がありすぎるトイレってなんなんだよう!

ドアは、いまにも壊されそうな勢いで、ガチャガチャ言ってる!ノブ壊されるぅ~。鍵なんてデカいとはいえ、あおり止めだよ。やばくない!!

私は、一人、座ったまま、TikTok (当然その頃はないけど)みたいに両手振って何とかせねばと!!!パペットみたいにバタバタ!

そうだ、「入ってますっ!」て言えばいいんだ!えっ!入ってますって英語で何て言うんだ!

今にして思えば、日本語でだっていいと思うけど、「外国にいるんだ」の脳みそモードでそれが思いつきもしない。だいたい日本人がそんなノックの仕方しないし。。。。

もう、パニック!汗だくの格闘(何に?)あわあわして、叫んだ言葉は、I am here! 「私はここにいます!」って、誰もこのあたしがどこにいるかなんて聞いちゃいないよね~! でもとにかく、ドアは静かになった。よかった。広い部屋に静寂が戻ってきた。

I am here....なのか?

ホテルのロビー。客室見たかったな~。
ホテルのロビー。客室見たかったな~。

で?「入ってます」は、結局、アイ・アム・ヒア(I am here)なのか?

こういう英語が旅では大事なんです!よね? 正解は、サムワン・イン(Someone in)。たったこれだけ。イエィ!ちゃんとネイティブにおせーてもらいました。

でも英語のテストだったら、✖です。え?

書くとSomeone's in. サムワンの後に聞こえない、ちっちゃなズがいます。

Someone’s in here. 大抵の日本人はサムワンズ・イン・ヒア が正しいのよって言うに決まってる。その通り、正しく習うのは大正解です。

でも、旅先で突然、わっ!と思う時にテストで正解の英語などは大事か?

入ってま~すはサムワン・イン。あ~簡単。この事件()のあと、実証済み。

ノックは返さずに使ってみた。よ~~~~く通じた。ひとつ、英会話が出来た気分になった。この気分が、大事だと思うよ!

オチとしては、「イエ~ス」というのでもいいらしい。なんだ・・・。

郷に入っては郷に従えない!

静かになった個室に次なる問題が起こる。

気付く人は気が付くと思うけど、四方に手を伸ばしても壁に届かないひろ~~~~いトイレ。紙どこ?

ドアノックより大事な問題。紙だよ、紙!

 

ふむ。あるにはあった。壁に。でも手の届かない壁に。そして、何故だかえらく高い位置に。

ドラえもんのポケット

インド旅行では、さまざまな備品の入ったデカいバッグを肩に掛けて旅をしていたのね。魔法の様にいろいろと出て来るねと言われた四次元ポケット。その中には、ガイドブックや、タオルやノート、筆記用具に水筒に懐中電灯、etc。そして日本からのトイレットペーパー丸ごと。

 

ご存知の方も多いと思いますが、インドでは用を足したあと、左手で洗うらしいです。大抵のトイレには別に柄杓のようなものとか、水道の蛇口が低い場所についていたり、水桶や水を満たした囲いがあったります。

つまり、基本、紙は必要ないものです。が、外国人の利用するホテルなどではちゃんと紙はついています。ところが、あまり質が良くなくて、いつもの日本生活のように使うと、あっという間に詰まって逆流して、かなり悲惨な状況になります。

 

郷にいっては郷に従えで、1~2度は手で洗うを試してみたのですが、どう洗うかがわからない。さすがにこればっかりは実演してもらう訳にはいかないので、自己流でトライするしかなかったのですが、どうしたって出来ない。結局、お尻もびしょびしょ、果ては洋服までびしょびしょ。なんだかトイレが間に合わなかったみたいな恰好で外に出る羽目になって、すぐに諦めた。

 

インドで実感、紙質は日本が一番!ってことだった。でも大丈夫、トイレットペーパーはちゃんと持って行った。最初の失敗はデカいスーツケースを持って行ったことだったが、備えあれば憂いなし!トイレットペーパーは大正解だった。

ラジャスタンにはマハラジャのお城が幾つもありますよ!
ラジャスタンにはマハラジャのお城が幾つもありますよ!

郷に入って業を学べ

さて、マハラジャのトイレに戻って、ここは、ファイブスターのマハラジャホテルだよ。さすがにトイレに紙はあるだろうと思ったよ。

銀の食器から注がれた琥珀色の紅茶を、ボーンチャイナのティーカップで味わうゴージャスなところだよぅ!

う~ん。至極の時から一変、今はトイレで、歩いて7歩先の紙をどうやって手に入れるかをロダンの彫刻のように考えている。

そんな自分がいたんですよね~。

 

どうせ誰も見ていなんだから、拭かないという手もある。水を流して、手で洗うという方法もある。

私が選んだ方法は、そのまま、おかしな格好で、(服を押さえたまま)ペンギンみたいに歩いて、壁まで行って、重厚な真鍮のペーパーホルダーから片手で紙を手繰って、引きちぎって、またおかしな格好で戻って、座って・・・。

だだっ広い部屋で何をやってんだか。

 

この国にはこの国の当たり前がある。

この失敗は、日本人には笑えるけど、もしかしたら、インドの人にはアホちゃうかの話しかもしれない。紙が必要ならば、先に紙を用意してから行くのが普通かもしれないよね。その証拠に、確かに立って千切るにはちょうど良い位置についていた。

 

旅は、いつも新しい発見と驚きに満ちているけど、行動や欲求は普段の生活とそう変わらない。そして、未知なる地での当たり前のことが出来た達成感は感動に繋がる。

たかが、5分にも満たないマハラジャトイレ体験。

それは、ン十年経った今も思い出しては笑える。しかし、残念!ファイブスター、紙質までは覚えていないんだわ。

旅のきっかけとなったラジャスタンのアーティストたち
旅のきっかけとなったラジャスタンのアーティストたち

 

この旅のきっかけになったインドのアーティストたち。タール砂漠の奥深く、ジャイサルメールからやって来てくれた人もいた。私たちのために演奏してくれたんだわ。いい思い出です。

 

考えて見たら、これより遡ることさらに数年前、彼らが日本に来た時、真っ先に柄杓を探していた。通訳さんを通してもなぜホテルのトイレで柄杓が必要なのかまったく理解できなかった。

仕事の合間でなかなか買い物もできない時、彼らがこれなら!といったのは、500mmの牛乳パックだった。

 

習慣というものかな。今はビジネスホテルでもウォシュレットがついていることが多いから、どうなのだろう。

もし会えることがあったら、使い心地をぜひ聞いてみたいものだ。

異文化 あるあるは、自分が体験して、へー、そうなんだと知り得たことを気ままに書いています。あくまで体験に基づいているので、正確な情報ではないものも混じっているかもしれません。異文化体験の興味に繋がってくれればの願いで書いています。