異文化 あるある Vol.6 たまごかけご飯は命がけ?

世界に誇れ!たまごかけご飯だよ~!

炊飯器を新しくしたんです!

この世に美味しいもの、山ほどあれど、何が一番美味しいかって、炊き立てのごはん。

この美味さに敵うものってあるのだろうか・・・・。

こんどの炊飯器、どんなご飯に炊きあがるか、ドキドキ、わくわくなんですね~~~~。

ああ、日本人なんだわ~。

叫び声の上がるビジネスホテルの朝食会場。

 ところで、ビジネスホテルって日本語です。コンパクトで安価で、朝食バイキング付きで、あ!そうそう、このバイキングも日本語です。前置きはこのくらいで、貨幣価値に差がある海外からの人々にとってもビジネスホテルはとても便利な存在。

 特にこういったホテルの朝食は、B級グルメの宝庫。地方なんか行ったりすると、その充実度(?)は高く、和洋中華に地元のごはんの友なんかもあったりして、節操のない魅力に溢れかえっている、もともと食い意地が張っている私など、朝っぱらから動けなくなってしまうほど食べてしまって、仕事にならない時もしばしば。

 地方の、それも普段は外国人など宿泊しないホテルでは、イベント関係などで訪れた外国人の受け入れはなかなか大変で、私もコロナ前に何度かお客とホテル側の間に入って、てんてこまいな朝食時間を過ごした経験があります。 懐かしいなぁ。。。そういう経験が今の仕事に繋がっているんですけどね。

生でたまごを食べる危険な人々

 基本、短期の仕事で日本に来る人は、ほぼ日本のことを学んで来ることはなく、そこで行う仕事のことだけに集中している。なので、朝食も、日本ならではのものというより、普段自分の食べるものを食べる人が多い。

 大体、ヨーロッパ系はジュース、トーストにゆで卵、フルーツ、ハム、紅茶。アメリカ系はシリアルにスクランブルエッグ、サラダにコーヒー。中国系は、おかゆに卵焼きとか。。。。

 日本人はその点、雑食と言うか、健啖家というか、節操がないというか。。。私のことです、はい。その日によって、パンだったり、ご飯だったり、両方だったり。。。

 それはどーでもいいのですが、ここで重要なのは、日本人の定番、炊き立てのごはんに生卵。そのなまたまごです。ビジネスホテルの図としては、いくつかの大皿料理に混ざって、たまごが山積みになっていて、「生たまご」「ゆでタマゴ」と書かれたプレートとかが立っています。まあ、形式はどうでも、当然のようにこの2種類の殻付きたまごが存在します。

 通称ガイジンさんには、これ読めませんから、自分のテーブルについて、タマゴを割って、物凄い奇妙な声を発するわけです。奇妙なってところ、ミソですよ。いい年のオッサンが、朝っぱらからお化けを見たような恐怖の混じる大声ってさ、びっくりするでしょ?

 何が起きたと思って、どうしたのって行くと、クックされていない(調理されていない)って、泣きそうな声で言うんです。そりゃそうよ。生たまごだもの。びっくりマナコで見つめられる。ふむ、どう言うか・・・・。日本人は生たまごが好物なんです・・かな?

 ええええっ!!!それは素敵なカルチャーショック!未知なる極東の島国の人々は、生たまごを食す危険なヘビのような人々だったのです!

生ビールって、フレッシュビア?

 話はちょっと飛んで、外国で生ビールを飲むための英語ヒント。日本人、「とりあえず生ね。」ってセリフはごく普通に耳にしますよね。生ビールって英語で何て言うの?つーと意外と知らない人が多い。外国人もビール好きはとっても多い。暑い日のゴクゴクって飲むビールの美味さは世界共通。私たちも海外旅行に行ったら、生ビール飲みたいじゃん。でもね、普通、ビアって言うと、瓶ビールにコップが被って来ます。いや、コップないかも。。。ラッパ飲みする人も多いからな。。。。ま、それはともかく、生ビールだ!

 生ビールは、ドラフトビール。話し言葉なら、「ドラフトビア」。これで汗をかいたグラスビアが飲めます!ゲフッ! 

んじゃ、生たまごは?

 生たまごを喰うのか?お前ら! ショックの収まらないガイジンさんに、しょうがない。ゆで卵はこっち!と教えてあげる。割っちゃった生たまごは、これもしょうがない。ホテルの人に伝えて下げてもらう。毎朝、毎朝、学ばない人々の色気も素っ気もない叫び声がレストランに響き渡る。

 やれやれ、ホテルの人も困ってしまいますね。日本人のお客様もいるんだから、ゆで卵だけにする訳にいかない。ホテルの人にお願いして、ある程度ガイジンさん人気の料理に英語表記してくださいとお願いした。

 生たまごってなんて言うんですかねぇ。人の良いパートの女性が、一生懸命、紙とマジックペンを持って応えようとしてくれた。家族経営だったりするホテルも多いので、みんな揃ってにわか英語教室になる。

 ローエッグ、raw eggs と書く、若しくは、uncooked (料理されていない)、ゆで卵の山には、boiled eggs と書く。どうだ!また英語の語彙が増えたぞ! 

 翌日の2つのたまごの山には、大きな文字の書かれた紙が載せられていた。そして、raw egg の文字だけを見て、顔をゆがめるガイジンさんを見ていると、私たちが外国に行ったときに見るゲテモノなのかなぁ。と思う。

 そうそう、羽化直前のゆで卵を好むアジアの国々もある。あれ、私たちにとってはかなりキツイ。あれか?いや違うだろう。。。。 

ロッキーが呑んだ生たまごの意味は?

 生たまごごときでむくつけき大男が、10歳の女の子のような怯えた声を出すことはとても奇異に感じていたのですけどね、実は生たまごを安全に食べられる国って日本くらいかもしれないのですよ。

 言い換えれば、卵を生で食べる国は日本くらいしかないと言っても過言ではないということ。私たちは黄身に箸をいれるとトロ~ってなる動画とか見ると、じゅわ~って生唾が湧いてきますが、それも日本の食文化のたまもの。ガイジンさんたちには、かなりオエ~って感じの危険感が湧いてくるらしいですよ。

 ある年代の人は分かると思いますが、映画「ロッキー」の中でシルベスター・スタローンが生たまごを5個、ごくごく飲むシーンがありました。ダメボクサーが俄然やる気を出して、スタミナをつけてるって解釈したのは日本人だけ。

 製作されたアメリカ目線で見れば、危険なことに挑む捨て身のロッキーの象徴だったようで、5個もの生たまごなんて、見ているほうもその命がけの心意気を十分に感じたそうですよ。スタローンはあのシーンについては別ギャラを要求したらしいという話。ホントかどうかは別にして、生たまごの概念はこのくらい違うってことです。

 もし、映画関係者にもうちょっと知識があれば、日本の生たまご使ったと思うけどね。

日本の常識、世界の非常識はタマゴもだよ。

 どういうこと? 実は日本のタマゴは高度な安全管理を行っているので、生でたべられるのです。今まで書いてきた「危険」の意味はサルモレラ菌で、時として命にかかわる恐ろしいものです。またヨーロッパでは、日本以上に鳥インフルエンザの猛威にさらされていて、その時も代用卵液を使うように推奨されるようです。(鳥インフルの家禽類の肉やタマゴを食することでの感染は認められていいないらしいですが。)

 生たまごは危険、という概念は、ほぼ全世界の共通らしく、アメリカなどではスクランブルエッグだって、カチカチボロボロだし、目玉焼きも両面焼きが推奨されています。ゆで卵も中身トロトロはほぼほぼないと見て間違いはありません。

 世界に半熟たまご料理がまったくないわけではないですし、日本のたまごが100%に安全とも言えないと思いますが、少なくとも、一般に流通する日本のタマゴに対して、私たちは「危険」とは感じませんよね。

 物価の優等生ともいわれる安くて安全なたまご、実は世界に誇れる食材なんですよ!

たまごかけご飯、この味、分かる人々の幸福感

コロナ前、日本に来る外国人の中で、ご飯を主食とする人達、私が関わったのは、香港人や、シンガポール、マレーシアの人たちですが、たまたま食事が用意されるツアーでご一緒しました。東京でも人気の和食屋さんで、そこのランチメニューには、サービスで生たまごがつくんですよね。

 ごはんと味噌汁はお変わり自由です。生たまごを初めて食す人も多かったのですが、既に、「たまごかけご飯」を知っていて、楽しみにしていた人もけっこういたんですよ。アジア人は、欧米人と違い、粘りのある日本米を高級米として認識している人も多く、肉より魚を好む人も沢山います。

 日本のタマゴは安全で生で食べらるということを伝えて、食べ方を簡単に説明。もちろん、嫌な人もいるでしょうが、時が経つほど、2杯目のごはんはたまごかけご飯で楽しむ人が増えて来ていました。年々、日本食が浸透して、様々な情報がSNSなどを介して知れ渡ってきたのも大きな要因でしょうね。特に経済成長が著しい中国の富裕層には結構有名らしく、近年の生たまごの輸出量はものすごい勢いで伸びているのだそうです。

 日本のブランド米も、パクリが横行するほどの人気ですから、ほっかほかの炊き立てのしっとりしたごはんに生たまごをかける。この極上の至福感を知ってしまったら、ドはまりでしょう。そのうち「たまごかけご飯」がアジアのトレンドになるかもしれませんね。

 日本の安くて安全な「たまご」ありがとーーーーー!だけどさ、あまり人気になると品薄で値上がりしそうで心配でもあり・・・・・。それよりも、世界のタマゴがクリーンで安全になればいいのにね。

 そうそう、余談ですが、インドではニワトリの卵より、アヒルの卵の方が主流でした。薄いピンクやブルーがかった色で、食材として考えると、キレイというより、少々不気味な感じでしたが、味はしっかりしていて濃厚でした。

 もちろん、生では食べませんでしたが。

異文化 あるあるは、自分が体験して、へー、そうなんだと知り得たことを気ままに書いています。あくまで体験に基づいているので、正確な情報ではないものも混じっているかもしれません。異文化体験の興味に繋がってくれればの願いで書いています。

 次回も食べ物のお話しだよ!お楽しみに!