異文化 あるある Vol.1 椿姫はツバキを知らない?

へぇ~!そうなんだ。気にしたこともなかった 目からウロコのツバキの花

 その国に住む人にとっては何の変哲もないものが、旅人たちにとっては、とても珍しいことだったりして、疑問にさえ思ったことのないことを質問されると、何も答えられないこともよくあるんですよね。

ジョルジョ・バルビエ の描く 椿姫
ジョルジョ・バルビエ の描く 椿姫

椿姫はツバキを知らない?

 オペラに興味のない人も、「椿姫」の題名くらいは知っているだろうし、劇中歌の「乾杯の歌」は結婚式の乾杯のシーンで耳にした人も多いと思うんですけど。知らないと言う人も、曲を聞けば、ああ、この曲かとなると思います。

 実はこのオペラの原題は 「La traviata」ラ トラヴィアータ、「堕落した女」と言う意味です。なので、どこにも椿はないんですよね。この原作小説が「La Dame aux camélias」まさに椿の貴婦人で、最後の単語、camélias が椿と言う意味です。日本では、原作の小説の名前がそのまま使われているので「椿姫」。オペラとしての「椿姫」は世界では通用しません。

 英語、イタリア語で椿のことをカメリアと発音し、フランス語はキャメリアという発音です。そして、題名はともかく、主人公の椿姫の名前がヴィオレッタ。これ、スミレという意味。原作ではマルグリット、英語名でマーガレット。なんか変ですよね。

おー!これがツバキ!!

 冬から春にかけて、椿の花はごく身近に目にします。庭木でも、公園でも、花のまま落ちる景色はまさに花のじゅうたんのようです。特に「あ!つばきだぁ!」と騒ぐほどでもないのですが、日本を訪れてこの花に出会う、海外の、特に女性の観光客たちは、感動の声を上げ、この花はなんという名前?と聞いてくる確率は90%以上。

 キャメリアですよ。するとその90%以上の方々は、ご多分にもれず、「ああ、これがカメリアなのね!」とまた感動に満ちた声を上げるのです。どうやら、彼らはその単語を知っていても、実際にどんな花かは知らない人が多いようなのです。

 「なんて美しい花なんでしょう!」椿の花はとても西洋人の好みに合っているように感じます。

 ツバキの学名はキャメリア ジャポニカと言うそうですが、すでに海外に渡って久しく、独自の品種改良されているものらしいです。が、多分、そこいらに植えられて、普通に目にするものではないのでしょうね。

 幾重にも重なった大輪の薔薇を思わせる形、花のまま落ちている景色、そして油分が多く、てらてらと光る葉っぱなど、ものすごく美しく感じるらしいです。

 して、フランスの椿姫は、本当にカメリア、椿の花を纏っていたのでしょうか? このブログのトップに入れたバルビエの描く椿姫も、なんだか薔薇の花を飾っているようにみえます。

 女性解放の先駆け、ココ・シャネルも生涯つばきを愛したと伝えられていますが、デフォルメされた形は、薔薇っぽい感じがしないでもない。

 ヨーロッパの女性たちの心を魅了する花、カメリアの魅力は、私たち東洋人とは違うイメージ、感覚があるかもしれませんね。

 オリーブオイル、亜麻仁油、そして美容に効果ありと人気のアルガンオイル。日本にも世界に誇れるキャメリアオイルがあるわけですよ。

 小瓶をお土産にするのもいいですよね。


たった一つの花の名前で広がる世界がある

 左は日本でも大人気のミュシャの描く椿姫です。月の25日間は白い椿、5日間は赤い椿というストーリーに従って、白椿を身に着けるマルグリッドの姿を描いていますが、左下の椿もよく見ると、葉っぱがギザギザしているのがわかります。

 八重のハマナスのようですね。ミュシャも実はツバキを見たことがなかったのかもしれませんよ。

 

逆光に映えるやぶつばき

 異文化 あるあるは、自分が体験して、へー、そうなんだと知り得たことを気ままに書いていきます。まず1回目は今の季節に咲き誇るツバキの花についてのちっちゃなエピソード。言葉や常識は時間軸と共に変化していくものだし、住んでいる地域や世代、時代によって、感じ方も変わるかもしれませんが、実際に見聞きすたことを大切にして書いていきます。